我妻教育2

事務所は、あたしと八暮丹さん(マダムの娘で元第一助手)の二人になった。


しばらくの沈黙のあと、仕事を再開させた八暮丹さんは、伝票整理で電卓を叩きながら口を開いた。


「ジャスも言ってたけど、レシピなんて公表した早い者勝ちよ?」

あたしをたしなめるような口調。

「もしくは、有名な者勝ち。どこの世界でもそうでしょう?マダムを訴えたところで、あなたのためにはならない」

ちらりとあたしを見て、また電卓を叩き出す。


そして、八暮丹さんは、一人言のように言い捨てた。

「出し惜しみせずに、早くブログに出しておけば良かったのに…」