我妻教育2

突然、取り澄ましていたマダムの態度が一変した。


「ここは私の事務所よ!ただの助手の分際で楯突くなんて!文句があるなら出て行きなさい!!」


あたしを睨み付けて大声で怒鳴り、出口を指差した。

上品が売りのマダムの初めて見る形相に背筋が凍った。


泣きたいような悲しい気持ちの中に、ふつふつと怒りがわき上がってくる。こんな気持ち初めて。


“コンコン”

マダムが指差した戸がノックされ、隣の事務室からためらいがちにジャスが顔を出した。

「マダム、そろそろ出ないと。下に車待ってるし」


「わかったわ。ジャス、このあとの仕事はあなたに任せるわ。行くわよ」

あたしを無視してマダムは玄関へ向かう。