我妻教育2

強い声の調子で、呼び止められた。反射的に振り返る。


「啓志郎くん!」


啓志郎くんが一人、あたしに向かって駆けてきた。


「もう帰るのか?」

軽く上がった息。急いで追いかけてきてくれたのかな?


「あ、うん、あたしの用は済んだから、もう事務所に戻るんだ」


「タクシーでか?」


「ううん。電車。ここから駅近いから、歩いて行くよ」

駅の方角を指差した。


「そうか。では送ろう」


「えっ!啓志郎くん、パーティーは?もう良いの?」


「送ったあと、また戻る」


「え、そんな、悪いよ。あたしなら一人で…」