我妻教育2

しばらくして、安治斉さんが合流した。

入れ替わりであたしは退散。


きらびやかで騒がしいグランドバンケットルームの重い扉が閉まったとたん、ドッと疲れが出た。


終始マダムとは話をするどころか、目も合わせることもなく、ただ気まずい思いをしただけだった。


そそくさとクロークで受け取ったコートを羽織り、エントランスへ。


自動ドアが開き、冷たい風が肌に吹きつける。

「寒っ」

ストールは忘れてきた。事務所に。

結局、荷物も全部置きっぱなしだし。

もう一度、事務所に戻らないと…。


コートの襟元を押さえて、身を縮めて一歩外へ踏み出したとき、


「未礼!」