夜さんの感想を聞くのが怖かった。

気まずい...

すると、後ろから拍手が聞こえてきた。

鍵盤から指を離した私は振り返って夜さんの方を見た。

満面の笑顔で手を叩いている。

「素晴らしい!いいね!」

今の演奏のどこが素晴らしかったんだろう?

お世辞なのかな?

その疑問は拭いされないものの、今は夜さんの言葉を信じてみることにした。


家電屋を出た私たちはどしゃ降り具合に顔を歪めた。

傘をさして速足で駅に向かう。

「真理さん、是非コラボしましょうね」

「ありがとうございます。楽しみにしています」

「今後ともよろしくお願いします」

また右手を差し出されたので、私は笑いながら握手した。

「それじゃ、僕はこっちなんで」と言い残し、手を振ってから夜さんは立ち去った。

後ろ姿はすぐに人込みに消えて。


姉とフーッとまた一息。

「始終爽やかだったねー」

「次会うのっていつなんかね」

「そういや約束しなかったね」


「で、真理。どこ行く?」

「は?」

「買い物だよ!何しに来たんかい!?」

そうだった。そういうことになってたんだ。

姉に付き合わないわけにもいかないので、大雨だというのに原宿で買い物してからやっと帰路についた。