母になった日

「おばあちゃんが亡くなった。」

   

3時間前に聞いた言葉。



真っ暗の高速を、父とふたり。

こうやって話すのは久しぶり。
会ったことのない母を産んだ、あたしのおばあちゃんも10年は会っていない。

お父さんはおばあちゃんの死因を語りだした。
急性心筋梗塞。

長野県の小さな町の山中。
心筋梗塞に襲われた祖母は発作をおこしてすぐ死んだそうだ。


10年前、私は母親が自分の命と引き換えに私を産んだのだと知った。
病みに病んだ私にはるばる会いに来たおばあちゃんは私に言った。




《あなたのお母さんは、あなたのために死んだのではないのよ。


         死んでもあなたを産みたかったから。



   彼女は、母親になったのよ。》



未だに死をもって母親になるという祖母の言葉の意味を私はまだ見いだせていない。






聞く前に、祖母は逝ってしまった。


でも祖母はきっと教えてなんてくれなかった。
あの人もきっと死をもって母親になった気がするのだ。







そんな祖母が私の母を生んだのは今から40年以上前になる秋だという。