「すみません、寝坊してしまって」


申し訳なさそうな顔で謝ると男は苦笑して


「まぁ優等生でも寝坊くらいするよな。でもなんかあったんじゃないかって心配したんだ、これからは気をつけてくれな」


と言ってきた。


その顔は明らかにホッとしていた。


あたしのことだけでホッとしたわけではなさそうだが…。


「実はもう一人転入生がいてな、岼埜と同じクラスだから待たせてたんだ。危ない奴だから気をつけろ」


最後だけあたしの耳元でボソッと呟いた男は話を聞いている限りだと担任のようだ。


なにが危ないのかまったくわからないあたしはもう一人の転入生を探した。


よくよく見ると長い銀髪をした女の子がこちらをジッと見ていた。


………あれで睨んでるつもりか!?

おい待て、赤のカラコンして眉と目吊り上げたメイクまでしてんのにそんなもんなのか!?

内から出てくる筈のもんがまったくねぇぞ!

どんだけ元ショボいんだよ!?

あたしの真似して誰も近寄らないようにする作戦だろうがそれじゃ逆効果になるぞ!?


「お、おい、あんまり睨むなよ。岼埜は一般人なんだから」


あたしが固まっているのを見て男、担任は慌てて女にそう言った。


すると女はふぃっと顔を逸らした。


「す、すまないな、岼埜。ほんと気をつけてくれ」


また耳元で小さくそう言った担任に


「ありがとうございます、気をつけます」


と言ったあたしは女をゆっくり観察する。


担任はこいつがいたからあたしを見て安心したのか…。


はー…

あたしこんな欲に塗れた目してないっつーの。


なんなのこいつの下心丸出しの目。


超キモチワルイ。