「ぐっ…がはっ…」


目前に血塗れで息も絶え絶えの不良らしき男が転がっている。


「なぁ、それで終わりかよ。散々人のこと馬鹿にしといててめぇその程度かよ。なぁ?なんか言えよ、おい」


それを容赦なく蹴り上げながらそう言う。


「がっ…ぐぁっ…う゛っ…」


だが男はなにも言わない。


「あんだけ見下してた相手にボッコボコにされて喋れないくらい悔しいのか?そーだよなぁ、あたしは女だもんなぁ。女にここまでヤられちゃあ男のおまえは面目丸潰れだよなぁ。しかもその情けねぇ面をあたしだけじゃなく他の奴にも見られてんだもんなぁ」


口端をニィッと持ち上げて男を嗤い、壁まで蹴り飛ばす。


「ぐあぁっ…!」


「なぁ、女にこんなにされて気分はどうだ?最っ高だろ?喋れないくらいやられて良い気分だろ?」


問いかけになにも答えない、否、答えられない男に一方的に話し続けたあたしは最後に鳩尾へと重い、重い一撃を与えてくるりと後ろを向く。


「二度とその面あたしに見せんじゃねぇよ。今度会ったら殺す。そこの隠れてる奴、さっさと失せな」


廃ビルの陰に隠れている男にそう言うと男は姿を消した。







『…~~…一匹狼は夜を唄う~…一匹狼は闇に踊る~…美しく~気高く~残酷に~…~~…世界を切り裂くその爪は~…世界を噛み砕くその牙は~…誰に止められることもなく~…~~…』







お気に入りの唄を口ずさみながらあたしは夜の闇へと姿を消した。