泡影の姫

「ありがとう、相葉さん」

放心している相葉にそう笑いかけた。
途端、彼女はせきを切ったように私に掴みかかってきた。
両肩を掴み、泣きそうな目で私を見つめた。

「なんで!?なんで、そんな足で泳いだんですか!?死んだら、どうするんですか!!」

責め立てる相葉の言葉が胸に刺さる。
返す言葉もない。
言い訳なんて、相葉も聞きたくないだろう。

「それでも、泳がなきゃいけなかったの。私は、泳ぐしかできないの」

だから代わりにそう返した。
たとえ、選手にはなれなくても。
今日の私には、泳がなければならない理由があったのだと。
彼女に分かってほしくて。

それに彼女を巻き込んでしまったことは申し訳ないと思う。
でも、相葉にしか頼めなかった。
私の表情から何かを感じ取ったのか、それとも何を言っても無駄だと思ったのか、相葉は奥歯をかみしめるように苦い顔をして私から手を放した。