泡影の姫

「湊?」

彼は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「お前バカか!?死ぬぞ」

ああ、本当に馬鹿だと思う。

湊が怒っていることが、うれしいとさえ思うのだから。

「私、人魚姫にはなれないなぁ」

苦笑しながら大きく息を吸って、呼吸を整えた途端ぽろぽろと涙がこぼれてきた。

頬を伝う温かい感覚をぬぐいながら膝を抱える。

昔から人魚姫の話が好きだった。

好きな人に振り向いてもらえなかったとしても自分の意志を貫き通した人魚姫は哀れなんかじゃない。

光に背を向けた彼女は、

いったい何を得て、

何を想って海の泡となって消えていったんだろう?

そんなことに思いを馳せたし、水の中に儚く消えていける彼女がうらやましかった。

だけど、私はそうなれない。

きれいに消えていけない私は、醜く最後まであがくのだ。

湊に対するこの気持ちに名前を付けよう。

これは〝恋〟だ。