泡影の姫

時間が時間なだけに、開いている店は少なかった。
何軒か回ってみたがそれらしいものは見つからない。
レンタルなら、多少古くても扱っているかもしれない。
そう思ったがカードを持っていないことに気付いた。
身分証がないから新しく作ることもできない。
結局収穫ないままに時間だけが流れていった。
インターネットで調べれば、何かしらヒットするだろうか?
どのみち今夜は諦めて家に変えるしかなさそうだ。
世の中なかなかどうしてうまくはいかない。
浅はかな私の考えなんかじゃ、湊どころかたった一曲の歌にさえたどり着けない。
不意に口元が寂しくなって、カバンの中を漁った。
吸っていたのは、ほんの短期間だったのに、私の体はすでにニコチンによって蝕まれていたらしい。

「ん?」

カバンを覗き込んでもタバコは見つからなかった。
そういえば、湊に没収されたままだ。ライターもない。
ああ、やっぱり彼はちゃんと存在したんだと、当たり前の事実を確認できたことで妙にうれしくなった。

湊のことを探さないと。

だって私はまだ、自分の名前すら伝えていないのだから。