泡影の姫

「散々未成年者がどうのとか、法律について述べてなかった?今あんたがやっているのはどう見ても不法侵入だから」

色々手を出してみたけれど、私が今までやってきたことは誰かに迷惑をかける物ではなかったはずだ。
そして不法侵入はさすがにいけないだろうってことくらいは私でも分かる。

「ばれなきゃ大丈夫だって。ここってずっと昔からノーマークだから」

大丈夫大丈夫と親指を立てた湊は今フェンスを越えてプールサイドに立っている。
よく知らないが、ここはどこかの学校の屋外プールなのだろう。

フェンスの向こう側は、懐かしい世界だった。
塩素の匂いが鼻をつく。
それさえも、久しく嗅いでいなかった。
こんなに長い間、水の中に入らなかったのは、初めてだった。そんなことに今気がついた。

「おいで」

湊がフェンス越しに手を差し伸べる。
もうこの人に抗う術を私は持っていない。
その声が、姿が、彼の全てが私を支配する。

おいでと誘う湊の姿と。

大好きなプール。

そんなものを前にして、私の理性なんて脆い。

本能に逆らうことなど、できはしない。