泡影の姫

確かにとれてすごいと思う。
でもあんまりにも自慢してくるものだから2000円近く投入するなら、その分で絶対これ以上のお菓子買えるじゃないって反論したくなる。
でも子供みたいにはしゃぐ湊に水を差すのも悪いなって思って言葉を呑み込む。

ただしそれはそれ。
これはこれ。

自慢されてばかりでは腹が立つので、私も別の機種でリトライ。
すると意外なほどあっさり取れてしまって、ちょっとばかり得意げに湊に見せつけてやった。

「たまたま。そっちが簡単だっただけ」

「でも私の方が湊より投資金額は少ないよ?」

「うるさいなぁ~」

むぅっと子供っぽく拗ねて見せる湊に笑いかけながら私は自分のカバンに取れたばかりの小さなキーホルダーを付ける。

私は今まで一度もこんな自分を想像したことなんてなかった。

学校に行かない私。

深夜徘徊を繰り返す私。

名前以外の素性をまったく知らない誰かと遊ぶ私。

ゲームセンターでクレーンゲームに興じる私。

泳げなくなる前の私が今まで知らなかった、私の今。

これはこれで楽しいかもしれないなんて、そんな風に思うことに罪悪感を覚えた。こんな風になりたかったわけではないのにと。

そう思ったら少しだけ胸が痛んだ。