泡影の姫

飛び込み台から降りて、最後の別れを惜しむようにプールの水に指を入れる。

私という力が加わったことで、波紋が広がり微かな泡が浮かぶ。

泡影―儚く一瞬にして消えてしまうそれは。

まさしく人魚姫のようだった。

美しく。

優しく。

歌を好み。

王子を愛して。

幸せを願い。

泡となって消えた彼女。

そんな風にはなれないけれど。

私は、私らしく。

ゆっくりと、泳いで行こうと思うのだ。

これから先も、ともにありたいと思う人と一緒に。

報われない思いもあるだろう。

挫折する日もあるだろう。

その時は思いっきり泣いて。

思いっきり、歌うのだ。

そうすることで、私はきっとこれから先何があっても。

生きていけると思うから。

「バイバイ」

小さくそうつぶやいて。

沢山の想いと共にプールの扉を閉めると、私は未来に向かってゆっくり1歩を踏み出す。

湊に会える、5分後の未来を想いながら。
 
Fin