泡影の姫

「人は、どうして歌うのかな?どうして泳いでみようと思ったのかな?」

人間は器用にいろいろこなせるけれど、その分何かに特化しているわけではない。

人以外でも歌うし、泳ぐ。

だけどそれは必要に迫られているからだ。
動物が歌うのは、愛情表現で子孫を残すパートナーを得るためだし、泳ぐのは単に移動手段だ。

言ってしまえば、人は歌わなくても泳がなくても死ぬことはない。

つまりそれは付加部分、といえなくもない。

港は少し考えて。

「そうせずには、いられなかったんじゃないのか?きっと」

といった。

「そうせずに、いられない?」

湊の言葉を反芻するように口の中で転がした私は、その言葉を声に出してみる。
湊はゆっくりうなずいて。

「あるいは誰かと、繋がりたいってそう思った時、自分に取れる手段がたまたまそうだったのかもしれない」

楽しくても。

苦しくても。

うれしくても。

辛くても。

誰かを、求める私たちは。

〝好き〟をきっかけにつながるために。

「私は泳いで、湊は歌うんだね。きっと〝そうせずにはいられなかった〟から」

自分の中にある衝動を、形に変えるんだろう。

花火が大きな音と共に暗闇を彩る。

「キレイだね~」

「ああ、そうだな」

光が空から降ってくる。

まるで流れ星みたいだ。