泡影の姫

「花火、いいところで見れるといいね」

「そうだな」

屋台のにぎやかさと人々の活気。
それらに居心地の良さを感じながら歩く。

夕暮れが近づいてきた分だけ、人が多くなる。
はぐれてしまわないように、どちらからともなく私たちは手をつなぐ。

夜が、駆け足で近づいてくる。
少し肌寒く感じる風が心地いい。
花火のメイン会場から少し離れた河川敷に私たちは腰を下ろして空を見上げる。

暗がりの中に星が瞬く。
あの日秋月公園で湊と見上げた星空を思い出す。

いくつもいくつも、とめどなく流れた星たち。

それらに、湊は何か願ったんだろうか?

例えば、叶わない願いだとしても。

「人は、どうして歌うのかな?」

「急だな?どうした」

「ん~ただ、どうしてかなって思っただけなんだけど」

人間は人魚姫ではないけれど。

私たちの生きている世界は、海なんかではないけれど。

人は、きれいな声で歌うし。

人は、力の限り泳ごうとするし。

人は、人に恋をする。