泡影の姫

「ありがとう。そんな風に言われると、ちょっとうれしい」

私の中が、優しい気持ちで満たされる。

「書けるといいね。できたら聞かせてよ」

湊はどんな言葉を今作っている曲に乗せるのだろう?
すごく聞いてみたい。

「まぁ、そのうち」

「あー湊じゃん!!」

曖昧な約束を私たちが交わしているすぐそばで、彼を引き留める声がした。

「おー湊!何彼女?」

知らない男女が複数、それぞれ楽器を携えて座っていた。

「お前らもいたのかよっ!?つーか違うからな。からかってやるな」

軽口を叩きながら彼らに近づいて行く湊。
どうやら湊の友達らしい。

「何やってんだ?」

「まぁ花火上がるまでまだあるからみんなでライブやろうぜって話になったんだ。つーか湊早く曲書き上げろよ。こんな可愛い子と花火デートとかムカつく」

湊の首根っこをがしっと掴んでからかうように話しかける湊の友人。

「お前連絡返さないから、俺ら誕生日にぼっちとかかわいそ過ぎる~って、話してたのに無用の心配だったわけかっ!お前だけずるいぞ!?」

「そーだ、そーだっ。罰として一曲弾いてけ!!作りかけの奴な」

「どんな無茶ぶりだよそれ!?」

楽しそうにはしゃぐ湊。
こんな彼は初めて見る。
そんなやり取りがうらやましいなぁと思う一方で、それよりも、聞き流せない情報があったことに気付く。