泡影の姫

「瑞希が泳いでる姿を見たいって思ったのは、本当なんだ」

ひとしきり笑った後で、湊は話題を少し前に戻す。

「急に、どうして?」

「今曲を一曲作ってるんだけど、歌詞がどうしても浮かばない」

「それと私、何か関係あるの?」

「瑞希を見ていたら書ける気がしたんだ。瑞希は、すごく楽しそうに泳ぐから。自由で、うらやましくなる」

今度は私がきょとんっとする。

自由?

思う通りに泳げなくなった私が?

「初めて見た時も思ったけど、本当に泳ぐのが好きなんだなって見てて分かるんだ。瑞希はそんな泳ぎ方をする。俺は、そんな瑞希のことをすごく自由だと思ったよ」

穴が開きそうなくらい湊のことを見ていたからだろう。
彼は苦笑しながらそう付け足した。

ああ、同じだ。
って思った。

湊の歌を聞いていると、

〝好き〟で。

〝自由〟で。

うらやましくなる。

そんな風に泳げているのだとしたら。

私は多分、すごく幸せだ。