泡影の姫

「聞いてもいい?」

湊の方をちらりと見た私はそうたずねる。
私の聞きたいことについて大方予想がついていたのだろう。

「コレは親父に殴られたんだ。彩愛じゃないし、平手でもない。ちなみに俺にはわざわざ殴られてやる趣味もない」

とオーバー気味なリアクションとため息のオプションをつけて湊は頬の痣と切れた唇について説明した。
見ているだけで痛々しいまだ腫れのひかないその傷は明日には青痣に変わっているかもしれない。

「なんだ、私に早く会いたくて来たのかと思ったのに、単純に飛び出して来て行くところがなかっただけか」

湊の茶化す口調に合わせてわざとそんな事を言ってみる。

冗談半分。

本音半分。

そんな比率でかき混ぜて。

「お、ま、え、はっ!ほんっと可愛いくないな~。せっかく花火見に行くなら浴衣着て来る位のサービスしろよ!直前まで泳ぐってどうよ?」

仕返しとばかりにまだ乾いていない私の髪をグシャグシャにして湊は笑う。

「水も滴るいい女♪って奴だよ。湊は分かってないなぁ~もう」

負けじと私も軽口を叩いた。

最近の私たちの距離感はなんとなくこんな感じで。
一緒にいることが、日常になりつつあった。

私は湊に少しは近づけているんだろうか?

知らないことを、知るたびにそんなことを思ったりする。