泡影の姫

ゆっくりした動作で水をかく。

水の中って関節への負担が軽くなるから陸上のよりも無理なく運動できるはずなんだよね、本来ならって今更そんなことに気付いて苦笑する。

選手であることやタイムを縮めることにこだわり過ぎていたせいで純粋に〝楽しむ〟ことを忘れていた。

大会で蛍が見せた泳ぎを思い出す。
きれいな泳ぎだった。
その姿や大会の様子を思い出して、少し幸せな気持ちで満たされる。

そんな気持ちを原動力にして、ゆっくり、ゆっくり、無理のない範囲で泳ぐ。
足に負荷をかけ過ぎて先生にでこピンを喰らったのを一応は反省しているので、今日は腕の練習が中心だ。

プルブイを足に挟んで腕だけで泳ぐ。
腕の力だけでもちゃんと前に進んでいく。

一つ一つの動作を確かめるように、私は泳ぐ。

前に。

前に。

その動作を繰り返して、端から端まで泳ぎ切る。
運動不足だった体にはそれだけでも結構な負担だった。