泡影の姫

「全部彩愛の趣味だよ」

なんてことないっていう風に湊はそう言ったけど、彼女を呼ぶ湊の声がすごく優しくて私はうらやましくなる。

恋も私の人生にはなかったなって、ふと思う。

恋ってもっと楽しいものだと思っていた。

もっと優しい感情で、暖かくて、キレイなものだと思っていた。

だけど私は湊を見ているとぎゅって胸の奥が苦しくなる。彩愛さんのことを考えると焦げ付いた感情に泣きそうになる。

情緒不安定。

宙ぶらりん。

それでも、この感情を手放せないくらいには愛おしい。

ああ、恋なんて。

「面倒くさい」

「わるかったな、面倒くさい奴でっ」

ぼそっと漏らした私のセリフを拾った湊は、自分のことととらえたらしくそっぽを向いてしまう。

私が思っていたよりも、湊はずっと子供っぽい。
くすくす笑いながら私はごめんと謝る。

「大丈夫、私もかなり面倒な奴だから」

だけど、今の私を。

私は昔ほど嫌いでなくなっている。

面倒でも、向き合ってみようかなってくらいには。