「ふぁー疲れたー」


ガララと挨拶運動を終わらせた愛ちゃんが帰ってくる。


「あっ愛ちゃん!」


早く聞かなきゃ、


早く気かなきゃ、部活を終わらせた男子達が入ってくるよ!


「ん?何ー?」


「あ、のね…愛ちゃんって、今好きな人いる…?」


声が震えている。


目も合わせられない…。


だって今。


ずっと言いたかった言葉を愛ちゃんにぶつけているんだから。


「え?もしかして亜華里ちゃん…」


嫌、やめて…


その先の言葉を言わないで…!


「私が好きなの!?私女の子は…」


「違うーー!」


良かった…愛ちゃんで…。


何故かホッとする。


「フフッ、冗談だよ(笑)…好きな人は今はいないよ?」


「え…?」


「いないよ?どうしてそんなに驚くの?」


「え…い…や…あの…ね?」


好きな人はいない。


でも隠しているってパターンもあるよね…?


きっと私が松村さんのこと好きって言ったら…


「無理だよ…私、応援できない…っ!」ってなるに決まっている。


苦しい気持ちで締め付けられていく喉を撫でて、口を開ける。


「私…ね…一度しか言わないよ?」


「う、うん…」


私の真剣さが伝わったのか、真面目な顔になる愛ちゃん。


「私…松村さんのこと好きみたい…好き。なの…!」


「え…」


沈黙が漂う。


否定するなら早く否定して。


応援できないなら早くそう言って。


怖い。怖いよ…


きっと私は…


「そっか…頑張って!複雑な感じもあるけど、応援するよ!
だって友達だもん」


「え…?」


予想外の答えで目元が潤む。


どういうこと…?


「好きでいて、いいの…?」


「どうして?好きでいるかは、本人の問題でしょ」


「だって…だって…」


「それで二人が付き合っても、全然問題ないでしょ~
私もう好きじゃないもんっ」


「愛ちゃん…ッ」


視界が海にでも溺れたように潤んでいく。


もう泣いて言葉も出ない。


それ以上にホッとして、喋れない。


言葉が見つからない。


ただ今ここにあるのは、


【恋情】を超えた【友情】。


友達。


そうだよね…友達だもん…


もし否定されても、されなくても、


愛ちゃんは友達だもん…


「泣かないでよ~、皆見てるよ?」


辺りを見ると男子ももう入って来ていた。


「え…!?」


「木村、空汰が好きだったんだなー」


「以外~頑張れ」


「え、ちょ、ええ!?」


涙も拭き取って我に戻る。


「い、言わないで!言わないでよ!ねぇ!?」


恥ずかしい。恥ずかしい!


皆の前で暴露してしかも泣くとか…!


教室にいるのは女子だけだと思っていたのに!


そうしたらガララとドアが開いて…


「ん?お前ら何してんの?木村?」


松村さんが入ってきた。