「香織~」


この日、学校が終わり私の家の前で二人で話していた。


「何?」


「好きな人とかいないのー?」


「分かんない。…気になる人なら」


「ええ!?誰誰!?」


「前言ったでしょ…」


「あぁ~」と言って黙り込む。


どうしてか。その理由は…


パッと松村さんの顔が出てきたから。


「亜華里は?」


「え?」


「亜華里はいないの??」


「いないよ~!いるわけ」


「本当に?」


真顔で私の真正面に立つ香織。


怖い。それと嘘が吐けない。


「本当だ…よ?(笑)」


「嘘吐いてるでしょ!なんか私だけ弱み握られたみたいで嫌だ!」


「ご、ごめん…」


ってどうして誤っているの私?


…香織には嘘吐けない…か。


「いるよ、多分。気になっていると思う。…多分」


「“多分”って何?」


「いや、だって…【恋情】がよく分からないんだもん」


「…まあ、難しいもんね。で、誰?」


「期待させちゃ嫌だから言わない」


するとしがみつくように香織が迫りよる。


こ、怖いって!!


「誰!」


嘘も何も…もう本音しか言えないよ!!


「空村 松汰さん」


「誰!?…あ。松村さんか。紛らわしい言い方するな!」


「…恥ずかしいんだもん」


「じゃあそれはもう【恋情】じゃない?」


「え?」


恥ずかしかったら恋情?


そうなの…?


「だって本当に好きじゃなかったら普通に名前言えるでしょ?
じゃあそろそろ帰るね!」


「うん。あ、バイバイ!」


…恥ずかしかったら恋情。


私はこの言葉を頭の中で何回もリピートしていた。