僕たちがそんな会話をしていると、そんな会話が聞こえたのか、左側の派手目な女子ふたりが

「そーいや、あいつもうちらと一緒のクラスなんでしょ?」
「あいつって誰?」
「あいつっつったら煉乃っしょ」
「え?まじ?つら、うけんだけど」
なんて言い、大きな声で手を叩きながら下品な笑い方をした。

そんな会話を聞き、杉原は僕に小声で
「え?煉乃さんってどんな人なの?」
なんていてもたってもいられなさそうに聞いてきた。
「いや、知らないよ」
と言いかけた時に、そんな会話を聞きつけたのか、
「教えてあげよっか?」
とさっき話していた左側の女子がにやにやしながら話しかけてきた。

「僕、そういう噂話は嫌いだから。僕はいい。ましてや本人がいない時にそんな話はやめなよ」

と言いたいけど、言えるはずもなく、僕は話そうとする彼女を遮るように
「ト、トイレ行って来る。」
そう言い、その場から離れた。
ドアの前まで行くと、そのやりとりをずっと見ていた煉乃さんがいた。
少し困った顔で、悲しそうな瞳で僕を見て、下唇を少し噛んで俯いた。

僕はただ、どうしていいかわからず、その場に立ち尽くした。