「怖………いんです」
「怖い?」
島内さんの言葉に、俺は眉をひそめて。
「……先日…とある入院患者さんの点滴を失敗してしまいまして。
その際…先輩にこっぴどく叱られまして。
『あのか患者さんは特別で、私たちも注意しなければならない‘特別’な患者さんだ』……と。
患者さんには特別だの特別でないだの…地位はないと言ったんです。
それから『点滴すらできないくせに何様のつもりだ』と言われて……深夜、その先輩にここを…」
そう言って島内さんが指を指したのは、背中。
そして、左手で前髪をあげて額を指差し
「ここも………です」
立ち上がって寄ってみると、その額にはかなり深い傷が残っていた。
「えっ……これやられたの?」
「……」
コクリと頷いた島内さんの目から、涙が1つ零れた。


