「季蛍さん、目眩するの?」
「………いや」
「どうした?」
「………なんか…前が真っ白っていうか、なんていうか」
「……季蛍先生」
心配そうに呼ぶ声に、私は顔を上げる。
しばらくすれば、クラクラしたいた視界もようやく戻ってきた。
「……あ、大丈夫かも」
と立ち上がろうとしたとき、体が言うことを聞かない。
足元はふらつくし、重心をかけると倒れ込みそうだ。
「…ん?どしたの?
なんかあったの?」
ものすごく聞き覚えのあって、安心できる声に、私は顔をあげる。
………蒼。
「あ。蒼先生、電話と季蛍先生」
「………あれ?季蛍………あ、電話ね」
私に近づこうとした蒼だけど、すぐに電話の方に方向を変える。
「あ、お電話代わりました………───」
電話に対応している蒼の目線は、私を捕らえている。
しかも、すごい険しい顔をして。


