「…ハァ。もうここは無理に連れてくしかないな」
ため息を一つ、服の袖を軽く捲る。
「高島、これ持ってってくれる?」
「はいー」
季蛍の上着を高島に渡す。
助手席の椅子に膝をついて、季蛍の体に手を回す。
「嫌ッ」
軽い季蛍を呆気なく抱えて、ドアを高島に閉めてもらい、鍵を閉めて病院へ向かう。
「嫌ッ、嫌だッ」
抱える腕の中でもがく季蛍を甘やかすほど優しくはしない。
「高島もこうして来てくれてんの。ワガママ言うな」
「行かない!!行かないってば」
「いい加減にして……。」
「やだッ、行かない、ヒッグ、ヒッグ」
暴れるのをやめた季蛍が、俺の胸元に顔をうずめて弱々しく『嫌』と呟く。
あれだけ暴れて拒否していたら、体力使うこと間違いなし。
それに高熱があるのに。
相当ぐったりしてしまった季蛍が俺の袖をぎゅっと掴む。
「……んー…」
「熱、高かったですか?」
「9度超してる。」
「えっ。一気に上がったんですね…」
「うん。……薬飲ませたんだけどね、昨日」
院内に入って、待合室で季蛍を降ろす。
「予約してた時間と少しずれちゃって。他の患者さん入ってるんですけど少し待っててもらってもいいですか?」
「あ、うん。元はと言えば遅れた俺らが悪いから。」
「すいません。じゃあ呼びますね、あとで」
「了解ー」


