「好かれてる、っていうかさ、
嫌いだったら付き合ったり
しないでしょー。」
あたしの席の前の席に
座って言った由香に、
あたしは視線をあげる。
慰める言葉を
かけてくれたと思えば、
「そもそもアンタの
あんな告り方で、よく
OKしてくれたよね。」
心底不思議そうにそんなことを言う。
「なんかひどく
ないですか由香さん…」
「だぁーってさー!」
あたしの告白エピソードを
思い出したのか、
声に出して笑う由香。
……まぁ確かに、かなり
不格好な告白ではあった。
―――あれは5月の初めの頃。
入学早々、朝に弱いあたしは
かなり寝坊してしまった。
駅から徒歩10分ほどの距離を、
遅い足でも頑張って全力疾走。
だけど結局10分遅刻で、
校庭はもう静かだった。
それでも出来るだけ早く!
と思って走り続けていたら
―――ズデンッ!!
昇降口の何もない所で、
思いっきり転んだ。
「いったあぁぁ…!」
それはもう有り得ないくらい
盛大な転び方だった。
正面からダイブしたせいで、
白いブラウスは汚れるし
両膝を擦りむくハメに。
もう!
なんでいつもこんな
ドジなことばっかり…!
けどまぁ、誰にも
見られてないし―――……
そう思い込んで
膝をかばいながらゆっくりと
立ち上がった、その時。
正面に、男子生徒確認。
バッチリ目が合いました。
彼は少し驚きを隠せないような
表情で、あたしを凝視。
世界が止まったのかと
思うくらい、お互い
しばらく無言で見つめ合う。
こ…これは……
「……見て、ました…?」
恐る恐る尋ねると、
彼は先程より落ち着いた表情になり、
手で口元を隠しながら
「……まぁ」
視線を逸らして言った。
………これ
絶対
笑いこらえてますよね。
