キミのための声







「……あ、あたし……」




「大事なモンも、見失う」





―――『謝んなくていーの。
ただ愛梨沙は逃げ癖があるじゃない?
それって大事なものも
逃がしちゃうと思うの』






大事な




もの……





「…泣きたい顔してるよ、
愛梨沙ちゃん」




「………………」




「悲しいって気持ちは、
葵が好きだから生まれる
気持ちだろ?それって大事な
気持ちなんじゃないの?」





好き




好きだよ





他に何も見えなくなるくらい





一目惚れだったけど




離れて感じるあなたを
追い掛けるたびに




どんどん恋しくなって



好きになって




……だけどいつの間にか




追い掛けても
追い掛けても





届かなくなってたよ―――……







「………………っ」





冷たい涙が頬を伝う。




建吾くんは切なげな瞳であたしを見て、
そっと頭を撫でてくれた。




「大丈夫だよ」




そっと、優しく




なにか壊れやすいものに
触れるように




包むように




建吾くんはあたしを慰めてくれた。




「……やっぱ…辛いよっ…
葵くん、あたしのことなんか
全然必要としてないしっ…」




「そんなことないよ」




「だって……!お弁当
作っていっても全然…っ、
逆に嫌そうな顔するし!」




「葵は少食だからね」




「いやそうゆうっ――……
……………え?」




一気に興奮が冷めたように
あたしは顔をあげる。




建吾くんはあたしを撫でたまま
ニコッと笑って、




「アイツかなり少食だよ。
ぶっちゃけ、お昼ご飯とか
いらないんだと思う」




「…………う、うそ…」




「ほんと♪」




どこか楽しそうな笑顔に、
あたしは首を傾げる。




「じゃあ単純に迷惑だったの……?」




建吾くんは目線を右上にあげて
少し難しい顔をする。




「んー、迷惑とは
違うんじゃない?アイツなら
ほんとに迷惑だと思ったら
迷惑って言いそうだし」




「遠まわしに言われてた
気がするけど……」




「それはさ、そんなに要らないのに
わざわざ愛梨沙ちゃんが早起きして
作るのが嫌だったからじゃないの?」