キミのための声








なんであたしの名前……




てかこの人…




あれ?どこかで―――……





「おー建吾。」




「うーす」




晃平が彼に歩み寄って
呼んだ名前に、一瞬で
脳内の回路が繋がり出す。




晃平が仲良さげに
『建吾』って呼んで



確かこれからあたしの話を
聞いてくれるのが
『建吾』って人で



あたしがこの人を
見たことある気がするのは……





―――そう、この人は
葵くんと仲が良いんだ。




この前2階の廊下で




葵くんの隣に居て
話してた人だ……!




晃平と「じゃーな」と手を振り
こちらに向かってくる『建吾』くん。



彼の背後には、「早くしろっ」
と陽を引っ張って行く
晃平の姿が見えて、
少し笑ってしまった。





彼はあたしの前に立ち、




「小野崎 建吾でーす。
晃平から話聞いてる?」




「あっ、はい!」




初めて話すことの緊張で
いつもより声が高くなる。




そんなあたしを見て彼は
フッと笑って、



「何で敬語?同い年でしょ」



「あ…まぁ……」



あたし、人見知り激しいからなー…と
心の中で自分に溜め息をついていると、
誰も居なくなった教室を覗いて



「とりあえず入ろっか」



そう言って微笑んだ。




……やっぱり



笑顔が、すごく優しい。




ちょっと細めの目も
決して怖い印象は与えずに、
逆に柔らかな印象を与える。



あたしは何だか安心して
自然と笑顔で頷いていた。