キミのための声








「じゃあ中山、も少ししたら
建吾来るからよっ」




放課後、生徒がバラバラと
教室から出ていく中、
重そうなエナメルバックを肩にかけて
晃平が微笑んで言った。




「うんっ。
晃平も部活頑張ってね!」



「おーよ!」



そう言って「じゃっ」と
手をあげる晃平の前に、
いきなり立ちはだかった陽。



しかも、めちゃくちゃ
眉間にシワを寄せた顔で。




「……なに、陽」



「なかりさっ!
俺には部活頑張れって
言わないのかよ!?」



「はぁ?」



「俺もコイツと同じ
サッカー部だぜ!?」



ビッと親指で背後に居る
晃平を差して言う。




……陽は、ほんとに



なんていうか




「……うざい…」



「ちょ、おまっ!
声に出てる、声に!」



今にも泣きそうな顔で
訴える陽に、溜め息をおとす。



「だって陽、サッカー
下手っぴじゃんっ!」



「こらあぁ!!」



「晃平はレギュラー
だけど陽なんか……」



「なんかとか言うなぁ!!」




「ははっ、おもしろいね。」




いきなり耳に入った、
聞き覚えのない男の声。




陽とほぼ同時に声の方を見ると、
教室を出てすぐの所に立つ
スラッとした男子。





「よ、愛梨沙ちゃん」




「―――へっ?」