「……今日の放課後、
話すんでしょ?」
あたしの両肩に手を置いて
柔らかな表情で聞く由香。
「……何を…?」
「なんだっけ、あのー…
なんとか建吾くん?」
「…あぁ……。」
そうだった。
…なんか、タイミング悪いな。
今日あんな態度とっちゃって
いきなり葵くんの友達に
相談みたいな……。
「愛梨沙、大丈夫だよ。
変な無理しないでちゃんと
知りたいこと全部聞いちゃいなよ?」
「…うん…」
なんかもう
全てが嫌だな
早く帰って
1人になりたい。
もう何も考えたくない……
「―――逃げてるでしょ。」
「………えっ?」
由香が、強い眼差しで
あたしを見つめる。
「あんたって
顔に出やすいからすぐ分かる。
今、全部嫌になってたでしょ」
う……
図星だ………。
「ご、ごめん……」
なんとなく謝ると、由香に
軽く頬を叩かれ、ぺちんっと
可愛らしい音がした。
「謝んなくていーの。
ただ愛梨沙は逃げ癖があるじゃない?
それって大事なものも
逃がしちゃうと思うの」
「うん……」
「愛梨沙は葵くんが
好きなんでしょ?」
「…うん。」
「なら怖くてもちゃんと
向き合わなきゃ!」
そう微笑んで、
ポンッと肩を叩かれる。
つられてあたしも、
少し笑顔になれた。
「由香…ありがとう…」
「んーん!頑張ってね!」
「うんっ!」
葵くんのことで分からない
ことなんて沢山ある。
ありすぎて何から
聞いたらいいか分からない。
でも、それでもいいから
ちゃんと向き合わなきゃ。
