キミのための声








「―――愛梨沙?大丈夫?」





教室に戻って席に着くと、
由香が心配そうに眉を
ひそめて近寄ってきた。




「なんか顔色悪いよ?」



「ん…大丈夫……」



「…何かあったの?葵くんと」



分かりやすい、と
自分でも思うくらい
表情が変わる。




由香はあたしの隣の席に座り
そっと尋ねる。




「…どうしたの?」





視界が




揺れる







―――『なぁ…アンタ
ほんとにこのままでいいの…?
なんのためにアイツと
付き合ってんだよ?』







こんなに心臓が高鳴るのは





痛いところを
突かれているから。







―――『アイツはやめとけ』







どうして?





あなたに何が分かるの?






―――『お前はアイツと
幸せにはなれない』








―――そんなこと





誰にも分からないじゃない







……そう







あたしにも。






「愛梨沙…?」




「……あたし…だめかも…」




「え?」




顔を上げて由香を見た瞬間、
目に溜まっていた涙が
ゆっくりと頬を伝った。





「葵くんは…あたしのこと…
なんとも思ってないよっ……」





あんな冷たい目で




あんな冷たい声で





遠まわしに




『どっか行け』




って




言われてるみたいだった。






「やだっ…もう辛いよっ…」




ギュッと由香に抱きつくと、
そっと頭を撫でてくれた。




「愛梨沙……」




「うっ…ぅ…」





泣きたくない。




こんなことで





どんどん弱くなってくよ……