キミのための声






学校指定の赤いネクタイを
だらんとしめて、
Yシャツのボタンを
3つほど開けて、
色っぽい鎖骨が見えている。





や、やばい




鼻血出そう―――……






葵くんは両手を
ポケットに入れた状態で、
少し目を見開く。





「……名前、知ってんの?」




「えっ?…あ!ああ、え、
えっとえっと、それはっ」




どうしよう!



うっかり名前なんか
呼んじゃったよ!




不思議そうにあたしを
見下ろす葵くんから目を逸らして、




「ほ、ほら昨日、葵くんの
友達が、そう呼んでたからっ」




「あぁ…なるほど」




「う、うんっ!」





ああああっ……




やばい





緊張しすぎて呂律がっ…!






「…アンタは」




カシャン、とフェンスに
両手を乗せながら聞いてくる。





「名前、なんてゆーの」





ごく普通の……
当たり前の質問なのに




葵くんに聞かれると
すごいドキドキして、
なんだか恥ずかしくなる。





「…中山、愛梨沙…ですっ」




葵くんは多分景色に目を
向けているけど、それでも
あたしは葵くんを見れずに
目を逸らしている。





「へぇ…」




その一声でも、
艶のある色っぽい声。




あたしは体育座りしたまま、
俯いて考えた。






……もしかして





告白するタイミングって






まさに今なんじゃ―――?