血はもうほとんど固まって、
かさぶたが出来始めていた。
……それにしても、葵くん
もしかして
心配…してくれてるのかな?
淡い期待を抱いて
葵くんを見上げると、
彼はじっとあたしを見下ろして
「……変な奴」
それだけ呟いて、
くるっと体を向き変えて
歩いて行ってしまった。
ツーブロ達は不思議そうに
あたしと葵くんを交互に見て、
首を傾げながら葵くんに着いて行った。
1人、ぽつんと
立ち尽くしているあたし。
頭の中では、
さっきの葵くんの言葉が
こだましている。
変な…奴……。
まさか葵くんにまでも、
そんなこと言われるなんて
ショックすぎる……
あたしは溜め息をつきながら
トボトボと自分の
教室へ向かって歩き出した。
「だっははははは!!
そりゃー最高!爆笑!」
机をバンバン叩きながら
腹をかかえて笑うのは、陽だった。
あたしはそんな彼を
睨む気力さえなく、
ただ肩を落とす。
「でも、あっちは愛梨沙のこと
覚えててくれてたんでしょ?
それってすごいじゃん。」
そう言った由香の言葉には、
フォローするという気遣いよりは
思ったことをただ言った
という感じが伝わってきた。
あたしは頬杖をついて、
小さな溜め息をこぼす。
「…変な奴、としてねー……」
相変わらず面白そうに笑う
陽の隣で、由香は「まぁまぁ」
と宥めるように言う。
「どんなイメージでも、
彼の頭の中に愛梨沙が
残ってるんだからいいじゃない。
これからも話しかけやすいと思うよ?」
「そーだよそーだよ!
頑張れよなかりさ!」
「アンタは黙ってて」
陽の便乗に、すかさず
鋭い眼光を向ける由香。
陽は首を引っ込めて、
「は、はい、すんません」と
弱々しく身を引いた。
「話しかけるって言っても…
相手にされないよぉ、きっと」
そう言って更に肩を落とす。
あんなレベル高い王子様に、
告白なんて出来るわけもないし……。
