キミのための声







声の主なんて、まだ
分からないのに。




確信なんか、
持てるはずないのに。





あたしの心臓は、
こわいくらいにドキンと跳ねたんだ。





ツーブロ達が
声の方に振り向くと




壁に寄りかかった葵くんが
冷たい視線をこちらに向けて、
薄い唇を持ち上げる。






「何してんだよ」






―――えっ、
あたしに言ってるの!?




そう思って体を強ばらせると
ツーブロが苦笑して、




「いやぁ、可愛い子居たから」




ツーブロの向こうから、
葵くんの視線が突き刺さる。





そして、バチッと目が合った。





すると葵くんは目を見開いて、
壁から背を離す。






「……あれ?アンタ」





そう言ってこちらに
歩み寄ってくる彼に、
あたしの心臓はうるさくなる。




ついにあたしの目の前に立ち
見下ろすようにしたあと、





「…やっぱり。朝の」





『朝の、ドジな奴』




って聞こえた気がして、
恥ずかしくなる。




「あ、えっと…
その節は、どうも……」




ぎこちない言葉を発する
あたしに、葵くんは
スッと視線を下げた。




辿ってみると、あたしの足。





「……膝、ほっといたのかよ」




「えっ?あ、あぁ!忘れてたっ!」




保健室、行こうとしてたのに!



葵くんのことで
頭がいっぱいだったから…!