キミのための声







いつの間にか俯いていた顔を
パッと上げると




目の前には、先程からこちらが
一方的に見ていたツーブロが
ニヤニヤしながら立っていた。




「え……いや…」




いきなりのことに
ギクシャクしていると、
他の男子も食いついてくる。




「あ、まじだー」




「肌めっちゃ白くね!?」




…チ、チャラいっ…!




てかいきなりそんなこと
言われたって困るよ!



ほんとはそんなこと、
大して思ってないくせにっ!




何かゴチャゴチャ言ってる
ツーブロともう2人の男子は
視界から外して、
葵くんともう1人に目をやる。




その2人はツーブロ達よりも
少し後ろの教室入り口付近に
立っていた。



葵くんはやはり無表情で、
もう1人の男子の話に
適当に頷いている。




そのもう1人の男子は…
ちょっとツンツンした
茶髪の頭をしていて、ピアスが多い。



だけど優しそうに微笑むところに、
ギャップがあると思った。





「君名前なんてゆーの?」




ツーブロじゃない男子に
そう尋ねられたところで、
やっと視線を彼らに戻す。




「えっ、な、名前ですか…」




男達は楽しそうにうんうんと頷く。




あたしは半ば諦めた気持ちで、




「…中山 愛梨沙です」




たぶんかなり、
無愛想だったと思う。




だけど男達は相変わらず
ヘラヘラしていて、



「愛梨沙ちゃんって
いうんだ、可愛いねーっ♪」




……思わず、「は?」と
声になりそうなのを
喉のあたりで止めた。




ありさなんて、
日本にいくらでも
居ると思うんですけど。



こういう人達にとっては、
社交辞令みたいなものなのか…




「てか何組なのー?」




再びツーブロに質問を受け、
そろそろ嫌気がさしてきた時。







「―――おい」






前方から聞こえてきた、
低くよく響く声。