キミのための声







廊下のど真ん中で
『王子様』に見とれて
突っ立っている姿は、
端から見たらかなり変だろう。



だけどそんなことを
気にしている場合じゃない。





だってだって





あの王子様が……!





徐々に縮まる、
あたしと王子様の距離。



でもあたしが
立っている位置よりも手前に、
教室のドアがある。



このままじゃ、
あたしの存在なんかに気付かず
教室へ入っていってしまう。




ど、どうしよう



いきなり話しかけたりしたら
気味悪がられるかな……





「なんで葵昨日
来なかったんだよ?」




1人の男が、王子様を見て
少し不満そうに言った。




やっぱり、あの王子様が
葵くんなんだ!




葵くんは面倒くさそうに
頭を掻きながら、




「…行かねぇよ、合コンだか
なんだか知らねーけど」





ごっ




合コン!?




あ、あんのツーブロ男っ…!



キラキラ王子様を
そんなよからぬことに
誘ってたのか!




「葵が来ればぜってぇ
盛り上がんのによーっ。
てか彼女欲しくねーの!?」




ツーブロの質問に、
思わずあたしも耳を澄ませる。




彼女…!



それは、気になるっ!




葵くんはしばらく黙ったまま
何も言わなかったが、
しばらくしてから





「……そういうの、
めんどくさい」





冷たい表情でそう言った。




「えーまじかよ~っ」と笑う
ツーブロや他の男子の中で




葵くんだけは、ただ
無表情で歩いていた。






めんどくさい…かぁ……




女の子、嫌いなのかな?




キャーキャー騒がれすぎて
うざくなっちゃったとか?



なんにせよ、あたしからしたら
かなり不利だ。





…まぁ、あたしなんかが
頑張ったところで





あんな王子様が
振り向いてくれるわけ――……





「あれ、君可愛いね!」





……え?