キミのための声






あたしの興奮ぎみに
ちょっと引いたのか、先程まで
身を乗り出していた由香が
引きつった笑顔で身を引く。




「な、なんか入学したばっかの時、
女子がキャーキャー騒いでた
人が居たのよ」




「名前はっ!?」




由香は目をパチクリさせ、




「…あんた、その人に
名前まで聞き出したの?」




積極的だね、と付け加えて
感心する由香に首を振って、




「聞いてはいないけど…
名前分かれば誰かに聞いて、
クラスに見に行ってみたくて」




「はー、なるほど。
んんー……確かね、
なんか女の子みたいな
名前だったんだよねぇ…」




眉間にシワを寄せて
考え込む由香を、
あたしは覗き込んで聞く。



「…まなみ、とか?」



「アンタ本気で言ってんの」



「う、嘘です嘘っ!」



氷のような冷たい視線に
肩を強ばらせる。







「ねー、さっき廊下で
見たよ~、葵くん!」






教室の入り口付近で、
友達に嬉しそうに言う1人の女子。





すると由香はハッと顔を上げ、





「それだっ!!」




「へっ?何が?」




「葵だよ、葵っ!
その騒がれてたイケメン!」




自分的にかなりすっきりしたらしく、
満足そうに声を張る由香。