透明ニンゲンと秘密のレンアイ




 結局春乃さんは「たまには大胆になってみるのもいいと思うよ」と言い残して、ヘンタイが待つ玄関に行ってしまった。



 ・・・・・・うん、あの、言いたいことが山ほどあるんですが。



 まず、ヘンタイは未だに玄関に突っ立ってたんだねって言いたい。


 私を待ってたのならごめん。ヘンタイ。



「若桜ちゃーん」



 玄関で春乃さんとヘンタイが何やら話した後、春乃さんが私を呼びながら戻ってきた。


 未だ私は洗面所の前に突っ立ったままだ。



「何ですか?」


「先に直流の部屋に上がってて。直流風呂に入るからさ。二階の一番奥だから」


「分かりました」



 私が指示された通りに二階に上がるために階段を上っていた時。



「あ・・・・・・っ!」



 下からヘンタイのしまったというような声が聞こえた。


 私が下を見ると、そこにはヘンタイが片足だけ階段の一段目に乗せ、私を見て顔を若干赤らめていた。


 正確には、私の下からだと丸見えなパンツを見ていた。



「ちょ・・・・・・! どこ見てんのよバカ!」



 私は慌てて振り向き、Tシャツの丈を下に下げながらその場に座り込んだ。



「ごめんっ。てか若桜ちゃんガード緩すぎだから。チェック柄のパンツが丸見えだったよ」


「いちいち柄を言わなくていいから! これは春乃さんに渡されたのがこれだけだったから・・・・・・」


「しかもオレのTシャツじゃん。そんなに着たかったんかオレのTシャツ」


「違うしバカ! てかなんでここにいんのよ。お風呂に入るんじゃないの?」


「ああ。そうだけど、着替えを取りに行こうと思って。そういう若桜ちゃんは?」



「春乃さんに直流の部屋に行っててって言われたから・・・・・・だけど?」



 って、もしかして春乃さん・・・・・・わざとですか?



「姉ちゃん・・・・・・わざとだな。あー、もう見ないから、ちゃっちゃと階段のぼりきっちゃって~」


「・・・・・・言われなくても」



 私はヘンタイがあっちを向くのを確認してから、急いで階段をのぼりきり、一番奥のヘンタイの部屋の前に行った。