「あれ? もしかして若桜ちゃん、雷ニガテ?」



 私は必死に頷く。


 雷だけは嫌いだよぉ!



「でも、だからと言ってそんなにオレの事誘って、無事でいられるとお思いで?」


「えっ・・・・・・?」



 私はそこでやっと、ヘンタイの腕にしがみついている事に気がついた。

 しかも、本当に無意識なんだけど、私の胸がヘンタイの腕に押しつけられてるんですけど?


「ふぎゃあっ!」



 私は慌ててヘンタイから離れた。瞬間、また雷が鳴る。



「ひいいっ!」



 私は今度はその場にしゃがみ込んだ。


「落ち着けって。オレがいるから」


「うう・・・・・・」



 「オレがいるから」なんて、そんなんあてになんないよ。


 なんないけど・・・・・・



 何で、こんなに安心出来るんだろう?



 ヘンタイはしゃがんで私と目線を合わせ、私の右手を握った。



「ほら立てよ。そんなんじゃ帰れねぇぞ~?」



 私を優しく立ち上がらせてくれた。


 てゆーか、私の心臓がさっきからうるさいよ!


 雷のせいで!


 ・・・・・・だよね? 別に、ヘンタイにときめいたワケじゃないよね自分!


 コイツといると、本当に私がおかしくなっちゃったみたい。


 私はヘンタイに手を握られながら、また歩き始めた。


 しばらくしてヘンタイは足を止めて


「じゃあ、オレこっちだから。傘は明日にでも返してくれりゃあいいよ」


「えっ?」



 あれよあれよと言う間に、私の手にはヘンタイの傘が握られていて、ヘンタイは鞄を傘代わりにして家まで走って行こうとしていた。



「ま、待ってよ! ちょっと、傘いいの!?」


「いいよ! オレこっから家までそんな距離ないし!」


「だか・・・・・・」



――ゴロゴロゴロ……ドッシャアアア



「きゃっ!!」



 私がひとまずヘンタイを傘の中に入れようと、駆け寄ったところで、また雷が鳴った。


 しかも、今日一番デッカい音で!


 もう勘弁してよね!



 私は驚き恐がりすぎて、足から力が抜けてその場にへたり込んでしまった。