短編集

修真は柚実が突き出す箱の一つ一つを説明した。全て本命とは無関係のものだった。

「え、ホントに…? これ全部義理?」

柚実は紙袋から出された箱達を目を見開きながら呟く。

「そう。全部義理」

「え、でもなんで? せっかくの本命を…」

「…」

なかなか答えないことに不安を覚え、箱達に向けていた目線を修真へと移す。修真は手に顎をのせ、遊び疲れて帰って行く子供達を見ていた。

「…俺に本命がいるから」

柚実は面食らう。10年以上幼なじみをやっているが、そんな気配は柚実には感じられなかったからだ。こころなしか修真の顔が赤くなっているように見えた。

「え?」

「だから、好きなやつがいるって言ってんの」

「あ、そうなんだ…」

なぜかわからないが、心が痛い。柚実は膝を胸に引き寄せ膝の裏で手を組み、半ば体育座りのような姿勢になる。そして目を瞑った。修真の顔は見れなかった。

「お前…。気になんないのか?」

「べ、別に…」

沈黙が訪れる。
少ししてから、ふいに修真が動く音がして、近づいてくる気配がした。



「愛してる」



!? 耳元で呟かれ、驚きで目を見開き、体を固くする。そして顔が熱くなる。そこで私の思考は完全に停止した。頭が真っ白のまま修真の方に目を向ける。
そこには、いままで見たこともないくらいに顔を赤くした幼なじみがいた。

「ど、どういう…」

なんとか軽く働いてきた頭をフルで回転させながら柚実は言う。

「…俺は、柚実が好きなんだよ」

修真に横から抱きしめられる。1度少しだけ働きだした頭がまた真っ白になる。

「まだわかってない?」

「えっと…、はい」

今ので全部消えました…。

「鈍感すぎ。っていうか、ここまでハッキリ言ってるのにわからないって鈍感のレベル越えてる」

「す、すみません」

「俺は、柚実が好きだ。愛してる。今までも、これからも、ずっとだ。これでわかったか?」

「…うん」

そこで修真が離れ、抱きしめられる前と同じように座る。心地よい暖かさがなくなり、どこか物足りなく感じた。

「柚実は、俺のことどう思ってる?」

「…わからない。でも、私があげたんじゃないチョコ食べるシュウ見るの、なんかイヤだった。シュウが本命がいるって言った時も、もやもやした。これって、好きってことだよね…?」

「だな。…あー、安心したっ」

修真は顔を赤くしたまま笑う。その笑みがとても愛おしく思えた。

「私、やっとわかったよ。シュウのことが好きだ」