私はいつまでシュウが貰ったチョコを食べないといけないの…?
隣を見ると修真は次々とチョコを頬張っていた。

「今年はチョコくれないのか?」

「…こんだけ貰っておいてまだチョコ食べる気? 毎年私のところにもくるし」

「お前チョコ好きだからいいだろう? それにお前のは特別だ」

予想外の言葉に柚実は面食らう。

「パティシエ目指してますから」

そして胸を張った。料理だけは自信があるのだ。

「…お前鈍いな。前からわかってはいたが…」

修真は食べるのをやめ、参ったと言わんばかりに眉間に手をあてる。

「え?」

「別に美味くても不味くても、お前が作ってくれたやつならすべて食べる。まぁ、美味いに越したことはないけどな」

どう反応したらいいのかわからない。ここは喜んでおいたほうがいいのだろうか?

「…そうですか」

「お前まだわかってねぇだろ」

…わかってないって言われても、本当になんのことだか検討もつかない。顎に手を当て考えてみる。しかし、なにも心当たりがなかった。

「はぁ…。で、チョコは?」

「ん?今年はナシ」

「え、なぜ?」

「…失敗した」

「マジか」

修真が目を見張る。

「嘘ついても仕方ないっしょ」

「…珍しいな」

修真は残念そうな声で呟く。流石に罪悪感があったが、本当に失敗してしまったものは仕方がない。無駄に手の凝ったお菓子を作ろうとしたのが間違いだったのだ。しかし、失敗して良かったと思う。もうシュウに贈られた数多くのチョコの1つは嫌だ。

「俺の毎年の楽しみが…」

「シュウ、もうこんなにもらってるじゃん」

柚実は修真の隣に置いてある、まだまだ沢山のチョコが入った紙袋を指差す。

「それとこれとは別だ。お前からチョコ貰えねぇなら他のチョコはいらない」

修真はさも当然だと言わんばかりにしれっと言う。

「え、でも、この中には本命だってあるんでしょ?」

「本命っぽいやつは全部本人に返した。ここにあるのは義理」

「え? じゃあこれは!?」

柚実は紙袋の中から、水玉の手の込んだリボンがついているピンクのラッピングがされた箱を取り出し、修真の顔の前に突き出す。このラッピングは義理ではないと柚実は見た。

「それは、好きなやつにふられて、もったいないから貰ってくれって言われたんで貰った」

修真が面倒そうに言う。

「…じゃあ、これも?」

紙袋の中から本命と思われる箱を次々と修真に突きつける。

「それはラッピングが趣味なんだと。…そっちのは買ったやつ。…それはーーー」