柳瀬が、ベンチの左側を軽く叩きながら言う。これって、隣に座れっていうこと!?どこに座ればいいのか 迷っていると、一応は恋人同士なんだということを思い出し、戸惑いながらも隣に座る。

「…柳瀬も雨宿り?」

「ああ。ちょっと出掛けてたら降って来て、近かったんでここに…」

「なるほど」

…会話が止まった。何か話さないとと思うが、話題が見つからない。どうしょう…。

「夏川、はい、これ」

柳瀬が小さな、英字柄の袋を出して言う。

「え?」

「夏川、来週誕生日だろう?」

「あ…。」

知ってたんだ…。最近、私とよく居る友達と何か話してたなと思ってはいたけどそこで聞いたのだと予測。

「本当はちゃんと誕生日に渡そうと思ってたけど、丁度良いから今渡しとく。受け取ってくれるか?」

何気に私のこと気遣ってくれてるのかなと思ってみる。

「もちろん」

私は袋を受け取った。

「ありがとう。中、見ても良い?」

「どうぞ」

そっと袋を破らないように開ける。

「あ…」

中から出てきたのは、ブレスレットだった。ゴールドの チェーンに、アクアオーラクリスタルをあしらった、シ ンプルなブレスレット。

「キレイ…」

「青色が好きだって聞いたから、アクアオーラクリスタル。気に入ってもらえた?」

「うん…!ありがとう!!」

ブレスレットを握りしめて言う。

「貸して。つけてあげる」

私は左手を柳瀬の前に出した。

「…はい、出来た」

軽く腕を上げて見てみる。ゴールドのチェーンがキラキ ラと光ってた。

「それ、俺とお揃い。俺のはアクアオーラクリスタルじゃなくてレッドメノウだけど」

柳瀬が袖を軽くあげ、手首を出す。そこには私と同じ形で、赤く輝くブレスレットがつけられていた。

「お揃いとか嫌?」

「いや、そんなことないよ」

軽く頭を横に振りながら言う。

「そっか。気に入ってもらえたみたいだし、良かった」

「うん。ありがとう。…でも、これ、高かったんじゃな いの?」

「そんなこと気にしないの」

「でも…」

「人の好意は黙って受け取れよ」

「…うん。わかった」

「なぁ、夏川。俺、小学生のときさ、よくこの公園に来 てたんだ」

柳瀬がおもむろに話し出した。 いきなりどうしたんだろう?

「そうなんだ…」