今、彼は笑っているのか、泣いているのか、分からない。



「……名前なんて、呼ばなくたっていいでしょ」



あたしは少し鈴から目線を逸らした。



「俺は、呼んで欲しいんだけどなぁ」



鈴はそう言いながら、あたしが座っていたベッドに座った。



そのせいか、ギシッと鈍い音を立てながらベッドが軋む。



この部屋は、鈴の部屋。



殺風景で、部屋にあるものは小さな黒いテーブルと、小さな冷蔵庫と、



この硬くて軋むベッドだけ。