「そういうあんただって、髪伸びてきてるじゃない」


あたしがそう言うと、鈴は少し笑った。



横顔を見ているせいか、鈴のまつげの長さがよくわかる。



暗い部屋で、ちゃんと見えているわけじゃないけど。



でも、カーテンの隙間からもれる月の明かりでなんとなく見える。




「李夜(リヨ)は、なかなか俺のことを名前で呼んでくれないね」



そう言って鈴は、たばこを灰皿に擦りつけた。



……なんでだろう。



どうして、まつ毛の長さや、少し笑った口元は見えるのに。



どうして、表情が見えないんだろう。