アバター

「確かな証拠はあるのか?状況証拠だけでは裁判所は令状を出さない。どうにもならんぞ」

「自殺者がそのサイトを見ていただけです。何もありません」

「アバサイトも協力的だと聞いているが」

「表面上はです」

ドタッ

手術室のドアが空いた。薄青い手術着を着た医師が近づいてきた。少し下向き加減だ。

石井は立ち上がった。

「警察庁のお方ですか……。全力を尽くしましたが、小林さんは御臨終しました。死因は失血死です」

石井は歯を食いしばり天を仰いだ。

「すまん小林!」とつぶやいた。

悲しみは湧いてこなかった。代わりに憎しみが湧いてきた。