アバター

「覚醒剤!」

石井は驚いた。

「ちゃんとした薬の覚醒剤です」

「なるべく早く戻してもらえないでしょうか?」

「それは出来ません。今戻すと、精神障害が残ります。時間をかけて、覚醒させます」

「由香さんは、連続自殺事件で唯一生き残ったのです。必ず、何かを知ってます」

「捜査は、あなた方の仕事。私は由香ちゃんを治療しているのです。いいですか、高いところから落下する時には、あまりの恐怖に空中で意識をなくすと言われています。由香ちゃんはもう落ちると思い、意識がなくなったのです。今もなお、死の淵を歩いているのです。恐怖のどん底です。頭の中は恐怖で回線がズタズタに切断されています。今、覚醒させると修復できないで、後遺症が残ります。由香ちゃんの脳の中では、時間をかけてゆっくりと回線を元通りにしている最中です。それが終わるまで、覚醒は危険です」

女医は分かりやすく石井に説明した。