アバター

六時まで何も起こらなかった。
石井の携帯にも連絡が入らなかった。
女医からの説明がある時間だ。

石井は、ナースセンターに向かった。

女医は、石井の登場を待っていたように。

「刑事さん、こちらにおかけください」

石井は差し出された、丸椅子に座った。

澄んだ大きな目で石井を見る。

石井は名刺を女医に差し出した。

「警察庁の石井と申します」

「当、病院の精神科の磯山です。遠路はるばる。警察庁の方が捜査に来るということは、広域凶悪事件ですか?」

「そうです。多くの方が自殺をしています」

「キャリア刑事さんですか?」

「俗にそう言われています」

「それでは、由香ちゃんの病状をご説明します。重度のPTSDです」

「PTSDですか。いつ、意識が戻るのですか?」

「戻すのは簡単です。覚醒剤を投与すれば、目を醒まします」