アバター

「重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)と言ってました」

「意識はいつ戻ると言ってました?」

「それは、まだ」

「由香さんについて、何か思い出しましたか?」

「携帯しか思いあたりません。それか私の知らないところで何かしていたかも……」

「何か思いだしたら、声をかけてください」

「はい」

母親は部屋のドアを閉めた。

「六時に、精神科の医者が説明してくれるそうだ。その時間まで待つしかない。君は、下で休んでいろ」

「携帯はどうなりました」

「ロックがかかって、中渕が解除している」

「そうですか、下に行きます」

小林が重たい腰を上げた。